0. 現在の位置:課題抽出
商品企画7プロセスの最初のステップ。ここで筋の良い課題を1件特定する。
本プロセスで特定する課題が、このあと6プロセスぜんぶの土台となる。
ここがいけてないと、後工程全部の精度が落ちる。
1. 課題抽出とは何か
生活者やユーザーが本当に困っていることを1件見つける作業。商品企画の起点。
商品企画の2つの順序
商品企画を2つの順序で考察する。
- ❌ 商品先行: 「売れそうな商品」を考え、後から顧客を探す → 商品とお客がかみ合わず、売れない
- ✅ 課題先行: 「困っている人」を見つけ、その解決策として商品を設計する → 自然に売れる
商品先行だと的外れになるリスクが高くなる。そのため、商品企画は課題を見つけるところから始める。
具体例
| 順序 | 展開 |
|---|---|
| 商品先行 | 「掃除用の手袋は需要がありそう」→ 設計・製造 → 既存品との差別化が不明確で売れない |
| 課題先行 | 「アレルギー持ちが掃除中の被曝・廃棄時の再飛散に苦しんでいる」を特定 → 解決策としてホコリを密封して捨てられるウェットな手袋を設計 → 困っている人に直接届く |
2. このプロセスで使うフレームワーク
課題抽出では3つのフレームワークを使用する。各ステップで1つずつ。
フレームワークとは、思考時の「型」または「補助輪」を指す一般用語。自由発想は迷子になりやすいため、先人が体系化した手順を借用する。
「課題抽出」プロセスで使用するフレームワーク3選
| 使用フレームワーク・テンプレート等 | 機能 | 使用ステップ |
|---|---|---|
| As-Is / To-Be(フレームワーク) | 現状と理想を対比し、ギャップ(=課題)を抽出する | ステップ1 |
| 5 Whys(フレームワーク) | 「なぜ?」を5回反復し、本質的原因に到達する | ステップ2 |
| 3軸評価(お役立ちテンプレート) | 普遍性・深刻性・解決可能性で課題を選定する | ステップ3 |
※ 「ペルソナ」も課題抽出と関連が深いフレームワークだが、本格的な使用は次プロセス(2.顧客理解)で行うため、本プロセスでは扱わない。
3. 30分で完了する3ステップ
課題抽出は3ステップで完了する。各15分・10分・5分、合計30分(目安)。
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次ページ以降、各ステップを順に解説する。
130件の書き出し
視点を決めて、その範囲内の困りごとを自由発想で30件書き出す。所要時間15分(目安)。
使用フレームワーク
As-Is / To-Be
現状(As-Is)と理想(To-Be)を対比して、その差分(=ギャップ)を課題として抽出するフレームワーク。
なぜやるのか
商品企画は「良い課題を見つけられるか」が勝負。最初から1つに絞ると、それが筋の良い課題かどうか判断できない。まず数を出して全体を見渡すことで、本当に解くべき課題が浮かび上がってくる。
手順
- テーマを決める(例:「料理」「掃除」)
- 視点を決める(例: 「朝の家事」)
- その視点の範囲で困りごとを、紙(またはメモアプリ)に書き出す
- 「批判禁止・量重視・自由発想」の原則で、15分内に30件を目標に書く
現状と理想の差分(ギャップ)こそが、解くべき課題
As-Is / To-Be 記入例
「現状(As-Is)」と「理想(To-Be)」を対比すると、その差分(ギャップ)が課題として浮かぶ。下のように、ガンガン量を出していくのがコツ。
※既にある程度ターゲットやペルソナが決まっている場合は、そのターゲットの視点をイメージして作成しても良い。(例:50代主婦など)
| 視点 | 現状(As-Is) | 理想(To-Be) | ギャップ(=課題) |
|---|---|---|---|
| 朝食準備 | 毎朝バタバタして子どもに怒鳴る | 余裕を持って準備、家族で会話 | 前日の準備・段取り不足 |
| 洗濯 | 干す場所が足りなくて部屋干し | サッと干せて乾く環境 | 物干しスペース不足 |
| 掃除 | 掃除中にホコリでアレルギー反応、ゴミ捨ても恐怖 | 被曝なく安全に完了したい | 廃棄時の防護設計の欠落 |
| 夕飯メニュー | 毎日「何作ろう」で15分悩む | 1週間分まとめて決まっている | 献立が自動化されていない |
| 買い物 | 仕事帰りに重い荷物で疲弊 | ネットスーパーで楽に届く | 注文の手間が大きい |
| 食器洗い | 食洗機に入らない大鍋が手洗い | 全部食洗機で済む | 食洗機サイズ不足 |
| 子の宿題 | 横で見ないと進まない | 自分で集中して進める | 学習環境・動機付け不足 |
| 朝の身支度 | 子が「あれどこ?」を連発 | 自分で取って準備できる | 持ち物の置き場所不明確 |
| 夜の寝かしつけ | 絵本3冊読んでも寝ない | すんなり眠りに入る | 就寝ルーティン未確立 |
| 家族の予定共有 | 口頭で言って忘れる | 家族全員がリアルタイム把握 | 共有ツール導入不足 |
| ゴミ出し | 朝バタバタで出し忘れ | 前夜に準備、朝はサッと | 分別と出し忘れの仕組み |
| 子の習い事送迎 | 夫婦のスケジュール調整が毎週ストレス | 毎週決まったパターンで自動運用 | 送迎ローテーション未確立 |
| 家計管理 | レシートが溜まる、月末に焦る | 自動で家計が見える | 家計アプリ未活用 |
| 夫婦の会話 | 子の話ばかりで2人の話なし | 週1回は2人の時間 | 意識的な時間確保なし |
| 自分の時間 | 1日5分も自分の時間がない | 1日30分は自分のため | 時間の使い方の優先順位 |
→ こうやって 「現状」と「理想」をペアで書き出していくだけ。30件でなくてもかまいません。できる範囲でOK。
✏️ やってみよう (ステップ1: As-Is / To-Be でアイデア発散)2026.05実施対象
上の記入例を参考に、あなたが選んだ視点で「現状(As-Is)」と「理想(To-Be)」を書き出してみよう。10件以上書ければOK(目標30件)。
| 視点 | 現状(As-Is) | 理想(To-Be) | ギャップ(=課題) |
|---|---|---|---|
As-Is / To-BeフレームワークをAIで加速する方法(5選)
同じ「30件発散」でも、AIの使い方は複数ある。状況に応じて選ぶ。
- AIに頼る前に、まず自分で手を動かして何個か出してみる
- 大事なのは思考停止で丸パクリするのではなく、そこから「自分なりにいいと思ったものを選ぶこと」。
2「なぜ?」の5回反復
ステップ1の30件から1件選び、「なぜそれが発生するか?」「それはなぜか?」を反復して、本質に到達する。所要時間10分(目安)。
使用フレームワーク
5 Whys
表面の課題に対し「なぜ?」を5回反復することで、症状の下にある本質的原因にたどり着くフレームワーク。
なぜやるのか
表面の症状(例:「朝起きられない」)だけ目覚まし時計で解決しても、根本原因(「前夜の準備不足」「生活リズムの荒れ」)が残っていれば、同じ問題が繰り返される。なぜを掘ることで、解くべき本質的な課題に到達でき、後工程の解決策が筋の良いものになる。
手順
- ステップ1の30件から気になるもの(=関心の高い課題・ギャップ)を 1件 選ぶ
- 「なぜそれが発生するか?」を問い、その答えに対して「それはなぜか?」を反復する
- 5回繰り返して、根本原因に到達する
5 Whys 記入例
表面の課題は症状にすぎず、その下層に本質的原因が存在する。
✏️ やってみよう (ステップ2: 5 Whys で本質に到達)2026.05実施対象
ステップ1で挙げた30件から1件選び、「なぜ?」を5回繰り返して本質に到達してみよう。最後に「表面の課題」と「本質の課題」を分けて整理。
| 問い | 回答 |
|---|---|
| 課題(表面) | |
| なぜ?(1回目) | |
| それはなぜ?(2回目) | |
| それはなぜ?(3回目) | |
| それはなぜ?(4回目) | |
| それはなぜ?(5回目=本質) | |
| 本質まとめ |
5 WhysフレームワークをAIで加速する方法(6選)
時間があれば、方法3(AI問い返し型)で自分の頭で考えながら答えるのが本質掘り下げに最も効く。時間がないとき・複数の課題を一気に処理したいときは方法1(AI任せ・一括処理)。自分の下書きを補強したいときは方法2。本質に確信が持てないときは方法4・5・6で補強する。AIに「答えを教えてもらう」のではなく、自分が考えるための「問いをAIに投げてもらう」のがポイント。
33軸による選定
ステップ2で本質まで掘った課題を、3軸で評価して採用するかを判定する。所要時間5分(目安)。
使用するお役立ちテンプレート
3軸評価
普遍性・深刻性・解決可能性の3軸で課題を評価し、採用するかを判定するお役立ちテンプレート(本講義用に整理)。
なぜやるのか
「自分が興味あるから」だけで課題を選ぶと、ユーザーが少ない・解決方法がない等の理由で商品化が成立しないリスクがある。3軸で「商品化する価値があるか」を客観評価することで、筋のいい課題を絞り込むことができる。
手順
ステップ2で本質まで掘った課題を、以下3軸で ○△× 評価する。
| 評価軸 | 判定基準 | ○の閾値 |
|---|---|---|
| 普遍性 | 多くの人が抱えるか | 100人中30人以上が共感する |
| 深刻性 | 強く困っているか | お金を払ってでもいいから解決したいレベル |
| 解決可能性 | 商品で解決できるか | 物理商品・サービスとして実装可能 |
判定結果による分岐
3軸とも○
→ 採用。次プロセス「2.顧客理解」へ。
△・×を含む
→ ステップ1に戻り、別課題を選択。
✏️ やってみよう (ステップ3: 3軸評価で課題を選定)2026.05実施対象
ステップ1で出した課題の中から気になるものや、ステップ2で本質まで掘った課題を、3軸(普遍性・深刻性・解決可能性)で ○△× 評価してみよう。3軸すべて○なら「採用候補」、△・×が含まれるなら別課題で再挑戦。
| 評価対象の課題 | 普遍性 (○/△/×) | 深刻性 (○/△/×) | 解決可能性 (○/△/×) | 総合判定 |
|---|---|---|---|---|
3軸評価(お役立ちテンプレート)をAIで加速する方法(5選)
- AIの評価はあくまで参考材料。最後は自分で決めることが大事。「なんかこれピンとくる」という直感も判断のヒントになる。AIの答えに引っ張られすぎないで、自分の感覚も信じる。
- 普遍性についてはロングテールの場合もあるので絶対ではない点に注意。
4. 次のプロセスへ(課題抽出→顧客理解)
本プロセスの成果物と、次プロセスでやること。
本プロセスを完了した時点で、筋の良い課題1件 が手元にある状態となる。
次プロセス「2.顧客理解(ペルソナ)」では、この課題を抱える人物像を 1名、具体的に描出 する。
+α:もっと課題抽出の精度を上げたいときは
本編3ステップで課題抽出は完成可能。さらに深く取り組む場合の4項目。
課題抽出について「より高い解像度で課題を掘りたい」「網羅的に世の中を調査したい」場合にトライする。
+α ①:人間による深掘り
AIを介さず、人間が直接「リアルな声」を収集する手法。最高解像度。所要時間は長め。
[1] 観察(フィールドワーク)
該当場面を体験している人物の行動を、第三者として観察する手法。
- 「不便そうな瞬間」「迷いの表情」「無意識の工夫」を記録する
- 自身の1日を観察する方法も有効
- カフェ・スーパー・電車内など日常空間での観察も成立する
観察の原則
- 30分程度を目安に集中して観察
- 解釈を加えず事実のみを記録(例: 「イライラ」ではなく「眉間にしわ、ため息」)
- 後日読み返した際に場面を再現できる解像度で記録
[2] インタビュー
身近な人物(家族・友人)に「最近の困りごと」を聴取する手法。
- 5W1H(いつ・どこ・誰・何・なぜ・どうやって)で深掘り
- 「他にも?」「具体的には?」を反復
- 1人あたり30分、3人実施で共通点が浮上する
聴取の3原則
- 自身の仮説を語らない(相手の忖度を誘発するため)
- 「なぜ?」を5回反復(5 Whysの実空間版)
- 沈黙を許容する(相手の思考時間を確保するため)
[3] 集めたリアルな声を整理する
観察メモやインタビュー記録(生の声)をAIに渡し、構造化して整理する。雑然とした生の声から、共通パターン・温度感の高い不満が浮かび上がってくる。
[4] 集めた声から課題を抽出する
整理された声を踏まえて、本プロセスの最終アウトプット「As-Is / To-Be / ギャップ」の形に変換する。リアルな声起点なので、机上発散より説得力のある課題が出る。
+α ②:AI活用の発展
本編のAI活用に加え、ペルソナシミュレーション・批判的検証など発展形の使い方。
[1] ペルソナシミュレーション
AIに人物像を演じさせ、対話形式で課題を深掘りする手法。2.顧客理解の前段としても有効。
[2] 本質的課題の抽出
[3] 批判的検証(デビルズアドボケイト)
[4] 複数AI比較(GPT × Claude × Gemini)
同一プロンプトを複数AIに発行し、回答の差分から共通する本質と独自視点を抽出する。
+α ③:DeepResearch 組み込み戦略
深層調査AI機能の戦略的活用。無料月5回をどのプロセスに配分するか。
機能概要
- Web全体を時間をかけて深層調査し、構造化レポートを出力する機能
- Gemini 無料月5回 / ChatGPT 無料月5回(2026年5月時点)
- Gemini for Students(学生1年無料Pro)は回数制限なし
無料5回の配分戦略
| プロセス | 回数 | 用途 |
|---|---|---|
| 1. 課題抽出 | 1〜2回 | 世の中の声の網羅調査 |
| 2. 顧客理解 | 1回 | ペルソナの統計的裏取り |
| 3. 市場・競合 | 1〜2回 | 市場規模・競合シェア調査 |
| 4以降 | 0〜1回 | 必要に応じて温存 |
課題抽出での使用例
本質仮説の裏取り
+α ④:評価軸の精緻化
本編3軸評価を発展させた、本格選別の手法。5軸版と優先度マトリックス。
[1] 評価軸5軸版
本編3軸(普遍性・深刻性・解決可能性)に2軸を追加:
- 普遍性: 多くの人が抱える課題か
- 深刻性: 強く困っているか、有償解決を希望するか
- 解決可能性: 物理商品で解決可能か
- 差別化容易性: 既存品より優れたものが作れるか
- 自身の興味: 自身が情熱を持って取り組めるか
[2] 優先度マトリックス
- 縦軸: 普遍性(高/低)
- 横軸: 深刻性(高/低)
- 4象限に課題を配置 → 右上(高×高)を優先
右上に複数該当する場合、5軸合計点で更に絞り込む。
[3] 直感的判断の言語化
- 「この課題、なんとなく筋が良い」という直感を判断材料とする
- その理由を言語化することで判断品質が向上する
- 言語化できない直感は、理解の浅さの証左である
[4] AI評価+人間最終判断のハイブリッド
AIに5軸評価を実行させつつ、最終判断は人間が直感を含めて行う方式。
AI評価が△でも人間が採用可、AI評価が○でも人間が不採用可、という双方向の判断を許容する。
なぜ「人間が考える」を先に持ってきているか(課題抽出版)
人間が先に考えることで身につく力。AIがなくても、自分で考えて回せるように。
課題抽出をAIに全任せすると、こんなことが起きてしまう
- 当事者意識が薄まる: AIは自分の生活実感を持っていないので、課題が抽象的になる
- 直感が育たない: 自分で手を動かさないと、「筋の良い課題」を見抜く感覚が身につかない
- AIの限界が見えない: 「これ違うな」と判断する力は、自分でやった経験からしか生まれない
人とAIの組み合わせ方を、自分の言葉で語る
これから先、就活でも仕事でも「AIをどう使っているか」を聞かれる場面が増える。以下のような言い方ができると、人とAIの組み合わせ方を自分の言葉で語れる。
△ 「AIでやりました」
→ 「自分では考えることができない」とみなされてしまう可能性
アピール例
- 「AIに複数案を出してもらい、人間が選びました」
- 「AIにまとめてもらったものを、人間が判断しました」
- 「AIで大量に案を発散させた後、自分の感覚で絞り込みました」
- 「人間が問いを考えた上で、AIで加速しました」
- 「AIを壁打ち相手にしながら、自分で結論を出しました」
- 「最初に自分で仮説を立て、AIにその弱点を指摘してもらって気付きを得ました」
- 「案をAIに批判してもらい、その批判に反論できる案だけ採用しました」
- 「AIの仮説を、自分の体験で検証しました」
- 「AIが見落としがちな『生活実感』を、人間側で補強しました」
- 「複数のAIに同じ問いを投げ、回答の共通点・相違点から精度を上げました」
- 「AIの出力を鵜呑みにせず、情報源・根拠を調べるようにしました」
- 「AIで効率化して浮いた時間で、より重要な作業に集中しました」
→ AIを使いこなしてる人
課題抽出において、まず人間が取り組み、その上でAIを活用する進め方まとめ
- まずAs-Is/To-Beで30件書き出し(15分・自分の生活体験から)
- AIに「漏れている観点・視点切り替え案」を補強させる(+10件目標)
- 「なぜ?」5回反復で本質に掘り下げ(AIに反論役を頼んで壁打ち)
- 3軸評価で1課題に絞る(最終判断は人間)
【まとめ】課題抽出プロセスの3ステップ
課題抽出プロセスのまとめ。30分で1課題を絞り込む3ステップ。
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所要時間 合計30分(目安)。
筋の良い課題1件を確定したら、次プロセス「2.顧客理解」へ進む。